近年、日本国内の不動産ファンド等において、海外投資家や海外ファンドが関与する案件が増えています。これに伴い、海外ファンドや海外親会社の会計監査人がグループ監査人となり、日本のSPCやTMK等の投資ビークルについては、日本の会計監査人がローカル監査人として対応するケースも増えています。
ファンド監査に関連するグループ監査とは、海外ファンドや海外親会社の監査を担うグループ監査人が、日本のSPCやTMK等の投資ビークルについて、現地の会計監査人(ローカル監査人)を活用して監査を行う体制を指します。Big4等のグローバルネットワークでは、メンバーファーム間で監査ツールや手法が共通していることもありますが、グループ監査人とローカル監査人が異なるネットワークに属する場合等では、言語や監査ツール、ビジネス慣習等の違いから、特にプロジェクト管理の重要性が高まります。
グループ監査を実施する際には、次の事項を事前に明確に定義しておくことが重要です。
これらの事項を曖昧なまま進めると、関係者間で認識の相違が生じ、後々トラブルとなる可能性があります。グループ監査においては、監査の進め方そのものよりも、プロジェクトとしての管理体制を事前に整えておくことが、円滑な実務対応につながると考えています。
グループ監査においては、グループ監査人がグループ監査意見に対する最終的な責任を負います。そのため、グループ監査人は、自らが必要と判断する監査証拠の入手や追加的な質問を、ローカル監査人に対して求めることになります。
一方で、ローカル監査人への報酬や追加対応に係る費用については、SPCやTMK等の投資ビークルが負担するケースが一般的です。この結果、次のような構造が生じることがあります。
グループ監査における実務上の難しさは、必ずしも監査そのものに起因するものではなく、こうした責任と費用負担の構造から生じている部分も少なくありません。監査責任を負う主体と費用を負担する主体が異なることは、グループ監査特有の特徴の一つといえます。
グループ監査においても、監査人同士の問題としてではなく、プロジェクト管理の問題として捉えることが、円滑な運営につながると考えています。
ファンド案件におけるグループ監査では、投資家、アセットマネージャー、会計事務受託会社、グループ監査人、ローカル監査人など、多数の関係者が関与します。これらの関係者全員が、グループ監査の枠組みに精通しているとは限らず、次のような点について、共通理解が形成されていないケースも見受けられます。
その結果、本来であれば事前に整理できた事項について、監査終盤になって認識の相違が顕在化することがあります。グループ監査を円滑に進めるためには、投資家やアセットマネージャーにおいても、グループ監査の基本的な枠組みを理解したうえで、グループ監査人とローカル監査人の橋渡し役を担うことが重要です。また、監査スコープ、報告期限及び成果物について、関係者間で共通認識を形成することも重要です。
弊所では、グループ監査を多数の関係者が関わるプロジェクトとして捉え、関係者間の共通認識の形成を支援することを心掛けております。