公正価値とファンド監査(投資不動産) ―ファンド監査の観点から―

公正価値とは、市場参加者間の通常の取引において、資産の売却によって受け取る価格、又は負債の移転のために支払う価格をいいます。会計基準上、すべての資産・負債に一律に適用されるわけではありませんが、ファンドが保有する資産の評価において重要な役割を果たしています。

なぜ公正価値評価が論点となるのか

日本のファンド監査では、TMK、GK等の投資ビークルにおいて、原価モデルによる会計処理が中心となっています。公正価値は、財務諸表の開示(賃貸等不動産の時価注記)や、減損の判定において利用されることが多く、計算書類本体の数値そのものを直接構成する場面は限られています。

一方で、海外投資家が関与するグループ監査において、IFRSに基づく連結財務諸表では、投資不動産そのものが公正価値で評価され、評価損益が損益計算書に直接計上されるケースがあります。そのため、日本のファンド監査では減損や注記の観点から検討されることが多い不動産評価が、グループ監査では財務諸表上の重要な見積りとして詳細な検討対象となる場合があります。

グループ監査については、グループ監査とファンド監査をご参照ください。

ファンド監査における主な論点

事業計画

公正価値評価の前提となる事業計画については、次のような項目の合理性を確認する必要があります。

  • 賃料水準
  • 稼働率
  • CAPEXの見積り

評価プロセス

公正価値評価においては、評価機関の独立性、評価手法の妥当性及び利用された基礎データの信頼性も重要な検討事項となります。

割引率・キャップレート

DCF法やExit Yieldを用いた評価では、用いられる割引率やキャップレートが、対象不動産の特性や市場動向と整合しているかが論点となります。

取得価格との関係

不動産ファンドでは、取得直後の評価において、大きな評価益が計上されるケースも見られます。特に取得後間もない時期において取得価格と評価額が大きく乖離する場合には、その背景や前提条件について慎重な検討が求められます。

弊所の考え方

公正価値評価は、不動産ファンドの実態をより適切に表す情報として有用であると考えています。しかし、評価モデル上の数値である以上、客観性や検証可能性も同様に重要です。特に取得価格等、実際の市場参加者による取引価格は、公正価値を検討する上で重要な観察可能データであり、評価の合理性を検討する際の重要な出発点になると考えています。

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